児童票の例文をそのまま書き写すと、保育所児童保育要録を作る段階で使えません。こども家庭庁が示す要録の記載事項は、保育所保育指針の各領域のねらいを視点にして「子どもの発達の実情から向上が著しいと思われるもの」を記入するよう求め、他の子どもとの比較や一定の基準に対する達成度の評定で捉えないよう留意を付けています。年齢によって立てる見出しも変わります。0歳児の児童票に「人間関係」という欄を作ると、指針の区分と合いません。
この記事では、国の資料と自治体の参考様式から、年齢ごとに何を書く欄なのかを整理します。
このテーマの全体は「児童票とは、記載項目と保存期間の基準」で説明しています。
児童票とは何を記録する書類ですか
児童票とは、入所から退所までの一人の子どもについて、家庭の状況と保育の経過を個人ごとにまとめた記録です。国は全国共通の様式を定めていません。名前が同じでも、どこまでを児童票と呼ぶかが自治体と園で違います。
越谷市は参考様式を公開していて、書類を2つに分けています。保護者が利用の際に記載するものが「児童調査票」「健康調査票」、施設が保育を提供するにあたり記録していくものが「児童票」「保育経過記録書」「個別面談等記録書」です。越谷市は児童票について、在籍・生活圏に係る記録(家族構成・住所・住居環境・かかりつけ医・緊急連絡先・生育歴等)、健康に係る記録(健診結果・予防接種記入欄・罹患状況・出席状況等)、発達状況に係る記録(運動発達・人間関係・知的好奇心の状況・感性・表現力・生活習慣等)、家庭との連携等が記載として想定されると書いています。
郡山市は児童票を一冊の綴りとして扱っています。公立保育所向けの資料では、児童票は入所から満了(退所)までの子どもの情報を個人ごとに管理するもので、義務教育が終了するまで保育所で保存すると説明し、綴る書類の順序を①児童表・生育歴、②重要事項説明書(入所時のみ)、③母子手帳コピー(入所時のみ)、④面接票等(入所時のみ)、⑤個別計画(作成する子どものみ)と示しています。施錠できるキャビネットに保管し、通し番号を付けてすべて揃っているか随時確認するようにとも書いています。
例文を探すことになるのは、この中の発達状況の記録、越谷市の分け方で言えば「保育経過記録」の部分です。家族構成や勤務先の欄に例文は要りません。自分の園の様式のどの欄で困っているのかを先に切り分けると、探す範囲が狭くなります。
児童票の記録が足りないと指導検査で何を指摘されますか
東京都は指導検査の主な指摘事例を公開しています。「児童票が未作成(記録不十分)である」という指摘があり、不十分な例として「保育経過記録がない」ことを挙げています。改善策の欄には、児童票には個々の児童の状況を把握するものとして児童の保育経過記録と、児童の保育上必要な最低限の家庭の状況等の参考記録が必要だと書かれています。
同じ欄に、記録する内容として「年度の重点、個人の重点、保育の展開と子どもの育ち、特に配慮すべき事項(子どもの健康状況等)など」が挙げられています。これは保育所児童保育要録の「保育に関する記録」と同じ観点です。日々の児童票を要録と同じ視点で積み上げておけば、最終年度にまとめ直す作業が軽くなります。
家庭の状況の記録について東京都が「最低限の」と書いている点は読み落とさないほうがよいところです。児童票の前半を厚くすることが指導検査で求められているわけではありません。欄を増やすほど保護者の記入負担と職員の転記作業が増えます。
児童票の例文をそのまま使うと何が起きますか
保育所児童保育要録に記載する事項(こども家庭庁)は、保育の展開と子どもの育ちについて、保育所保育指針第2章「保育の内容」に示された各領域のねらいを視点として、子どもの発達の実情から向上が著しいと思われるものを記入することとしています。そして、こう続きます。
その際、他の子どもとの比較や一定の基準に対する達成度についての評定によって捉えるものではないことに留意すること。
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の扱いにも留意が付いています。これらが到達すべき目標ではないことに留意し、項目別に子どもの育ちつつある姿を記入せず、全体的かつ総合的に捉えて記入するようにと書かれています。
例文を10項目並べて全員分を穴埋めすると、この2つの留意から外れます。同じクラスの児童票が似た文章で埋まり、その子について何が向上したのかが読み取れなくなります。要録を作る年度に、過去の児童票から拾えるものが残りません。
例文の使い道は、書く観点を思い出すことです。文章をそのまま借りる用途には向きません。5領域のねらいを一覧にして手元に置き、その子について向上が著しいと感じた領域を1つか2つ選び、根拠になった場面を書く。これなら例文集を見る時間は数分で終わります。
0歳児・1歳児・2歳児で児童票の見出しはどう変わりますか
保育所保育指針は、ねらい及び内容を3つの年齢区分で示しています。乳児(1歳未満)は3つの視点、1歳以上3歳未満児と3歳以上児は5領域です。0歳児に「人間関係」という領域名はありません。
指針は乳児保育のねらい及び内容を、身体的発達に関する視点「健やかに伸び伸びと育つ」、社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」、精神的発達に関する視点「身近なものと関わり感性が育つ」としてまとめています。0歳児の児童票で人との関わりを書く欄は、この「身近な人と気持ちが通じ合う」に当たります。特定の大人との応答的な関わりを通じて情緒的な絆が形成される時期だと指針が説明しているので、誰との間で何が通じ合ったのかを書く欄になります。
1歳以上3歳未満児の「人間関係」のねらいは3つです。保育所での生活を楽しみ、身近な人と関わる心地よさを感じる。周囲の子ども等への興味や関心が高まり、関わりをもとうとする。保育所の生活の仕方に慣れ、きまりの大切さに気付く。
3歳以上児の「人間関係」は文言が変わります。保育所の生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。身近な人と親しみ、関わりを深め、工夫したり、協力したりして一緒に活動する楽しさを味わい、愛情や信頼感をもつ。社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。
2歳児の人間関係の欄に「友達と協力して遊びを進める」と書くと、3歳以上児のねらいの文言になります。2歳児のねらいは関わりをもとうとする段階です。例として「使っていた電車を貸してほしいと自分から声をかける場面が増え、順番を待てる日もありました」と書けば、ねらいの言葉を写さずに、どこへ向かっている時期なのかが次の担任に伝わります。年齢をまたいだ例文の使い回しは、この区分の違いで崩れます。
年齢別に様式を分ける方法もあります。越谷市は保育経過記録を0歳児・1歳児・2歳児・3歳児・4歳児・5・6歳児の6種類で公開し、保育経過記録については一般的な発達段階を年齢別に一覧表にして確認する方法もあると書いています。文章で毎回書き起こさず、一覧表で確認する形を自治体が参考として示しています。
3歳児・5歳児の児童票は保育要録とどうつながりますか
保育所児童保育要録の「保育に関する記録」は、最終年度(小学校就学の始期に達する直前の年度)の1年間における保育の過程と子どもの育ちを要約するものです。こども家庭庁の記載事項では、最終年度の重点は年度当初に全体的な計画に基づき長期の見通しとして設定したものを記入し、個人の重点は1年間を振り返って子どもの指導について特に重視してきた点を記入するとされています。
要録にはもう1つ、「最終年度に至るまでの育ちに関する事項」があります。入所時から最終年度に至るまでの育ちについて、最終年度の保育の過程と子どもの育ちの姿を理解する上で特に重要と考えられることを記入する欄です。0歳児から4歳児までの児童票は、この欄の材料になります。
要録の運用は自治体が具体的に決めています。横浜市は、対象を翌年度小学校に入学する児童で3月1日に保育所に在籍見込みの児童とし、施設長の責任の下で担当の保育士が記載すると定めています。施設長は写しを遅くとも3月10日ごろまでに各小学校長に届くよう送付し、原本は当該児童が小学校を卒業するまでの間(6年間)保存します。提出日から3月31日までに健康状態や家庭の状況に重要な変化があった場合は、原本に追記・修正したものの写しを小学校長へ送付します。
送付の期限が3月上旬なので、最終年度の1年分を3月に書き起こす進め方だと間に合いません。4歳児までの児童票に個人の重点に当たる記述が残っていれば、要約する作業から始められます。送付時期と保存年限は自治体で違うので、自園の所管課の通知で確認してください。
児童票を紙から電子に変えてよいですか
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の第八十八条の十一(電磁的記録)が根拠になります。児童福祉施設及びその職員は、記録、作成その他これらに類するもののうち、この府令の規定において書面で行うことが規定されている又は想定されるものについて、書面に代えて電磁的記録により行うことができると定めています。児童票を電子で持つこと自体は、国の基準で認められています。
ZuMyは入園書類をオンラインで提出できるサービス「zuuumy」を運営しています。入園時に保護者から集める項目をフォームにしていくと、児童票の欄は2種類に分かれます。家族構成、勤務時間、緊急連絡先、生育歴、かかりつけ医、アレルギーの有無は保護者が入園前に一度入力すれば埋まる欄です。保育経過記録の欄は、職員が年度を通じて書き足していく欄で、見出しの立て方が園ごとに違います。
電子化を1度に進めようとすると、様式の見直しと現場の記録習慣の変更が同時に来ます。保護者が入力する前半の欄から始めると、紙の回収と転記がなくなる分だけ先に手が空きます。後半の保育経過記録は、様式の見出しを指針の年齢区分に合わせて整理してから電子に移すほうが、入力画面を作り直す回数が減ります。
入園書類の受付をオンラインに変える手順と、必要な項目の洗い出しについては、zuuumyの資料で実際の画面と項目をご覧いただけます。
よくある質問
児童票は何年保存しますか
法令で全国一律の年数は定まっていません。郡山市は公立保育所向けの資料で、児童票は義務教育が終了するまで保育所で保存すると示しています。保育所児童保育要録については、横浜市が原本を小学校卒業までの6年間保存すると定めています。対象の書類と年数は自治体で違うので、所管課の通知で確認してください。
児童票の「個人の重点」とは何を書く欄ですか
1年間を振り返って、子どもの指導について特に重視してきた点を書く欄です。こども家庭庁の「保育所児童保育要録に記載する事項」で定義されています。年度当初に長期の見通しとして設定したものを書く「最終年度の重点」とは別の欄です。
0歳児の児童票に「人間関係」の欄は必要ですか
保育所保育指針の乳児保育の節に「人間関係」という領域名はありません。社会的発達に関する視点は「身近な人と気持ちが通じ合う」です。0歳児の様式で人との関わりを記録する欄は、この視点に沿った見出しにすると、1歳以上の5領域との違いが職員間で揃います。
児童票の例文集は国が公開していますか
国は児童票の例文を公開していません。こども家庭庁が公開しているのは保育所児童保育要録の「記載する事項」と「様式の参考例」です。児童票については越谷市のように自治体が参考様式を公開している例があるので、自園の所管自治体のページを確認してください。
児童票と保育経過記録は同じものですか
自治体によって違います。越谷市は「児童票」と「保育経過記録書」を別の様式として公開しています。郡山市は児童票を綴り全体の名称として使い、生育歴や面接票、個別計画をまとめて管理する形を示しています。自園の様式がどちらの立て方なのかを確認してから記録の分担を決めてください。
出典
- こども家庭庁「保育所児童保育要録に記載する事項(別添1)」(確認日: 2026年10月22日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/6d38e9a2/20231016_policies_hoiku_69.pdf
- こども家庭庁「保育所児童保育要録 様式の参考例(別紙資料1)」(確認日: 2026年10月22日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/1b80bb69/20231016_policies_hoiku_70.pdf
- 保育所保育指針(平成29年3月31日厚生労働省告示第117号)(確認日: 2026年10月22日)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450&dataType=0&pageNo=1
- 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年12月29日厚生省令第63号)第八十八条の十一(確認日: 2026年10月22日)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82069000&dataType=0&pageNo=2
- 東京都福祉局「指導検査における主な指摘事例と改善策等について」(確認日: 2026年10月22日)https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/R6-02
- 越谷市「保育関連施設・事業所で使用する参考様式について」(確認日: 2026年10月22日)https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/kosodate/hoikujigyosha/hoiku_youshiki.html
- 郡山市「郡山市公立保育所」資料(児童票について)(確認日: 2026年10月22日)https://www.city.koriyama.lg.jp/uploaded/attachment/92273.pdf
- 横浜市「横浜市保育所児童保育要録の取扱い・記入について」(令和4年12月20日改訂)(確認日: 2026年10月22日)https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/hoiku-yoji/shisetsu/shisetsutaisaku/shitukoujou/youroku/20190329150247481.files/0023_20240206.pdf
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著者 小泉太郎(ZuMy株式会社 代表取締役CEO)。入園書類のオンライン化サービス「zuuumy」を運営し、保育施設の入園業務の電子化に携わっています。

