処遇改善等加算は、令和8年度からキャリアパス要件が区分1の必須要件になりました。令和7年度に1年間だけ置かれていた経過措置は終わり、要件を満たさない施設・事業所は区分1の認定を受けられません。公定価格上の人件費は、こども家庭庁の「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」に「令和7年補正予算で措置した+5.3%の改善を引き続き確保する」と書かれています。
処遇改善加算は令和8年度に何が変わりましたか
変わったのは2点です。1つは区分1のキャリアパス要件が必須になったこと、もう1つは区分3の加算額算定で「研修修了見込みの者」を人数Aに入れられなくなったことです。区分1〜区分3という構成と加算率の仕組みは、令和7年度から変わっていません。
処遇改善等加算とは、保育所や認定こども園などの公定価格に上乗せして支払われ、職員の賃金改善に充てる加算です。令和7年度に旧加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲが一本化され、区分1(基礎分)、区分2(賃金改善分)、区分3(質の向上分)の3区分に整理されました。区分ごとの要件と提出書類の全体像は処遇改善加算の一本化と区分1〜3の要件にまとめています。この記事は、令和7年度と令和8年度で取扱いが変わった部分だけを扱います。
根拠は通知の改正です。「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」(令和7年4月11日こ成保296・7文科初第250号)は、令和8年4月8日に改正されました(最終改正 こ成保319・8文科初第171号)。令和7年4月に出された版の第2の1「区分1の要件」には、次の但し書きが付いていました。
ただし、令和7年度に限り、キャリアパス要件に適合しない場合は、区分2の割合からキャリアパス要件分の割合を減じることとする。
令和8年4月8日最終改正版の第2の1には、この但し書きがありません。令和7年度は要件を満たさなくても区分2の割合を減らして加算を受けられましたが、令和8年度はその取扱いが終わりました。こども家庭庁の資料「令和7年度以降の処遇改善等加算について」も、キャリアパス要件を区分1の要件として設定したことを「(1年間の経過措置)」と注記しています。
キャリアパス要件はいつから必須になりましたか
令和8年度からです。こども家庭庁「処遇改善等加算に関するFAQ」第7版(令和8年5月15日時点版)のNo.78は、「令和8年度からキャリアパス要件を満たしていない施設・事業所の場合、区分1の認定が受けられなくなりますが、キャリアパス要件を満たしたのち、年度途中から認定を受けることも可能という理解で良いでしょうか」という問いに、「お見込みのとおりです」と答えています。
キャリアパス要件の中身は、通知第2の1に定められています。(1)と(2)の両方に適合すること、または区分3の適用を受けていることが要件です。
- (1) 職員の職位、職責または職務内容等に応じた勤務条件等の要件(賃金に関するものを含む)を定め、それに応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く)を定めること。内容は就業規則等の明確な根拠規定として書面で整備し、非常勤職員と法人の役員等を兼務している職員を含む全ての職員に周知すること
- (2) 職員と意見を交換しながら資質向上の目標と具体的な計画を策定し、計画に係る研修の実施または研修の機会を確保して、全ての職員に周知すること。計画に沿って研修機会の提供または技術指導等を実施し、そのフィードバックを行うこと
- (2)のイとして、幼稚園教諭免許状・保育士資格等を取得しようとする者がいる場合は、資格取得のための支援を実施すること。通知では研修受講のための勤務シフトの調整や休暇の付与、交通費・受講料等の費用負担の援助が例示されています
整備が間に合っていない施設は一定数あります。資料「令和7年度以降の処遇改善等加算について」には、キャリアパス要件不適用による減率適用施設の割合(令和6年4月時点、こども家庭庁保育政策課調べ)が載っています。保育所は2.6%、認定こども園は2.6%、幼稚園は17.8%、家庭的保育事業は32.4%で、施設型給付全体で3.6%、地域型保育給付全体で9.4%です。施設の種類によって開きがあります。
令和8年度の認定申請を終えている園でも、就業規則への根拠規定の記載と全職員への周知が抜けていれば要件を満たしません。賃金体系が規程に書かれているか、資質向上の計画と研修のフィードバックが記録に残っているか、この2点を先に確認してください。
区分3の「研修修了見込み」は令和8年度も人数Aに入れられますか
入れられません。FAQ第7版のNo.22は、「令和8年4月1日時点で研修を修了していない場合、令和8年度の加算額算定に当たり、当該者は「人数A」に含めることができなくなるので御留意ください」と書いています。令和7年度の経過措置を示したNo.20からNo.25までの6問には、第7版でいずれも「(廃止)」と記されています。
令和7年度に置かれていたのは、No.20の取扱いです。令和6年度に加算Ⅱの認定を受けていた施設・事業者について、令和7年4月1日時点で在籍していた職員であれば、加算額算定に係る研修修了見込みの者であっても「人数A」の「研修修了者」に含めて差し支えない、という令和7年度限りの扱いでした。令和6年度までの加算Ⅱは、基礎職員数の3分の1の人数分の加算額を算定できる仕組みで、要件の適正化によって加算額が減り、それまで賃金改善をしてきた職員への改善が行われなくなることを避けるために置かれたものです。
令和8年度の算定は、通知の定めどおりになります。通知第4の3は、人数A=基礎職員数×1/3で算定し、第2の3(1)のⅰとⅲに定める研修修了者が人数Aに達しない場合は、人数Aを当該研修修了者の人数で算定するとしています。区分3の要件そのものを定めた第2の3(1)の(注1)は、加算当年度の4月1日時点の研修修了者の人数で判断することとし、括弧の中で研修修了見込みの者を含まないと明記しています。
年度途中の増減は反映されません。FAQのNo.19は、年度途中に研修修了者の人数が増減しても(注1)では増減を考慮せず、加算当年度の4月1日時点の人数で当該年度中は算定する、としています。理由として、研修修了者の増減で年度途中に加算額が変わると基本給や手当の金額も変える必要が生じ、給与表・給与規定の改定等の事務負担が発生することが挙げられています。4月1日時点で育児休業等を取得している職員については、FAQのNo.63が算定に「含めて差し支えありません」と答えています。
4月1日時点で研修修了者が1人もいない施設には、別の定めがあります。通知第2の3(1)の(注1)は、年度途中に研修修了者を1人以上確保して要件を満たすこととなった場合、満たすこととなった日の属する月の翌月から加算を適用できるとしています。令和9年度の人数Aは令和9年4月1日時点で誰が修了しているかで決まるため、受講の順番は今年度のうちに組み直してください。研修の分野と修了要件は保育士の研修、令和8年度の修了要件と受講料で扱っています。
令和8年度の申請で出す書類は前年度と同じですか
2年目にあたる園は、前年度より減らせます。通知第3の2は、加算当年度の前年度に区分2または区分3の適用を受けている施設・事業所から、別紙様式5「賃金改善の誓約書」を徴し、設置者・事業者がその内容を職員に周知している場合は、別紙様式4「賃金改善計画書」、別紙様式4別添1「賃金改善明細書」、別紙様式4別添2「同一の事業者内における拠出見込額・受入見込額一覧表」を徴することを要しないと定めています。
区分ごとに求められる書類は次のとおりです。
- 区分1: 別紙様式1「加算率等認定申請書」、別紙様式2「キャリアパス要件届出書」、資質向上のための計画を示した書類。別紙様式2と計画を過年度に提出していて内容に変更がない場合、または加算当年度に区分3の認定を行う場合は、この2点が不要になります
- 区分2: 区分1の書類に加えて、別紙様式4「賃金改善計画書」、別紙様式4別添1「賃金改善明細書」、見込平均利用子ども数の算出方法を示した書類。加算額の一部を同一の設置者・事業者が運営する他の施設・事業所の賃金改善に充てる場合は、別紙様式4別添2
- 区分3: 区分2の書類に加えて、別紙様式3「加算算定対象人数等認定申請書(区分3(質の向上分))」、加算算定対象人数の算出方法を示した書類
提出先は所在地によって変わります。通知第3の1は、指定都市・中核市・特定市町村が管轄する施設は当該市等の長に、一般市町村が管轄する施設は市町村の長に必要書類を提出し、一般市町村分は市町村の長が取りまとめて都道府県知事に提出すると定めています。年度末の報告は別紙様式6「賃金改善実績報告書」で、通知第6は加算当年度の翌年度速やかに市町村の長へ提出することとし、職員ごとの賃金水準や賃金改善等実績額を示す明細書(別紙様式6別添1)を添付させるとしています。区分2と区分3の適用を受けた施設は、賃金の改善に係る収入・支出を明らかにした帳簿と証拠書類を、実績報告後5年間保管します。
ZuMyが提供している入園書類オンライン化サービス「zuuumy」で扱っているのは、保護者がスマホから入力する児童票、緊急連絡先、生活状況票、健康問診票、食品調査票の5種です。処遇改善等加算の別紙様式1から様式7までは、園と事業者が市町村または都道府県に提出する書類です。入園事務と加算の認定申請が同じ4月に重なるため、保護者から集める書類を先に手離れさせておくと、様式1から様式4の確認に時間を使えます。
令和8年度の公定価格では、処遇改善のほかに何が変わりましたか
3つ変わりました。こども家庭庁「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」(令和8年4月、成育局保育政策課)は、「3.保育人材の確保・テクノロジーの活用による職場環境の改善」の令和8年度の見直しとして、次の4項目を挙げています。
- (1) 保育士・幼稚園教諭等の処遇改善(令和7年人事院勧告+5.3%)
- (2) 経営情報等の報告を行っていない場合の減算の創設(令和8年7月から)
- (3) 年齢別配置基準を下回る場合の減算の適用タイミングの見直し
- (4) 保育ICT推進加算の創設
同資料の「3(1)保育士・幼稚園教諭等の処遇改善」は、「保育士・幼稚園教諭等の公定価格上の人件費について、令和7年補正予算で措置した+5.3%の改善を引き続き確保する」と記載しています。令和7年度の見直しは「保育士・幼稚園教諭等の処遇改善(令和6年人事院勧告+10.7%)」と「処遇改善等加算の一本化」の2つでした。こども家庭庁「保育政策関係資料集」には、公定価格上の人件費の改定率5.3%は令和7年12月に適用しており、令和7年の保育士の賃金には影響していないと書かれています。
加算率の仕組みは、資料「令和7年度以降の処遇改善等加算について」に区分ごとに整理されています。
- 区分1(基礎分): (a) 平均経験年数により2%〜12%。キャリアパス要件を満たさない場合に2%減らす減率の仕組みは廃止され、要件になりました
- 区分2(賃金改善分): (b) 平均経験年数により6%または7%と、(c) 9千円×算定職員数を率に換算したものの合計
- 区分3(質の向上分): 加算算定対象人数に応じて算定。旧加算Ⅱの4万円を1人以上支給する要件は撤廃され、一人4万円を超えない範囲で施設の判断により配分できます
自分の園の加算率は、告示の別表と都道府県等の認定で決まります。金額を確かめるときは、都道府県または認定事務を行う市町村の担当課に、別紙様式1で認定された加算率(a)(b)(c)を確認してください。単価と加算・減算の積み上がり方は公定価格とは、保育の単価と加算・減算の全体像で説明しています。
経営情報を報告していないと減額されますか
減額されます。減算額は基本分単価に5%を乗じた額で、令和8年7月から適用が始まりました。この減算は公定価格の調整部分で、処遇改善等加算の要件とは別の仕組みです。
こども家庭庁「公定価格に関するFAQ」第30版(令和8年4月8日時点版)のNo.316とNo.317は、適用の時期をこう示しています。
- 令和6年4月以降に始まる事業年度に係る経営情報等の報告について、令和8年7月1日時点で事業年度終了時点から8か月以上経過しているのに報告が行われていない施設は、令和8年7月分から適用されます。令和8年6月末までに市町村への報告を終えていれば対象になりません
- 令和7年4月から令和8年3月末を会計期間とする施設等で、当該事業年度に係る報告が未報告の場合は、令和8年12月分から適用されます
- 都道府県または市町村が指摘を行ってから、概ね1か月以内に特段の事情なく適切な報告等がなされない場合は、当該指摘から概ね1か月が超過した翌月から適用されます
- 適用を受ける期間は、本調整上の報告期限の属する日(事業年度終了時点から8か月経過後)の翌月から、適切な報告がなされる日の属する月までです
報告の様式にも注意点があります。同FAQは、令和8年4月以降は「ここdeサーチ」における「職員給与に関する事項」の様式が令和7年度様式に改修されるため、旧様式での報告ができなくなると書いています。経営情報等の報告は、子ども・子育て支援法第58条第2項に基づき、毎事業年度終了後5か月以内に行うものです。令和8年度に創設された保育ICT推進加算の要件とは別の手続きで、加算の要件の中身は保育ICT推進加算が創設、要件は4機能で扱っています。
よくある質問
処遇改善等加算の令和8年度の加算率は何%ですか
区分1は平均経験年数により2%〜12%、区分2は平均経験年数により6%または7%に、9千円×算定職員数を率に換算したものを加えた率です。区分3は加算算定対象人数に応じて算定し、一人4万円を超えない範囲で配分します。実際に適用される率は告示の別表と都道府県等の認定で決まるため、別紙様式1で認定された加算率を担当課に確認してください。
キャリアパス要件を満たしていないと、令和8年度はどうなりますか
区分1の認定を受けられません。令和7年度に限って置かれていた「区分2の割合からキャリアパス要件分の割合を減じる」という但し書きは、令和8年4月8日最終改正の通知から削除されました。キャリアパス要件を満たさない場合に2%減らすという旧加算Ⅰの減率の仕組みも廃止されています。
令和8年度の途中でキャリアパス要件を満たした場合、加算を受けられますか
受けられます。こども家庭庁「処遇改善等加算に関するFAQ」第7版のNo.78は、キャリアパス要件を満たしたのち年度途中から認定を受けることも可能かという問いに「お見込みのとおりです」と答えています。認定の時期と効力の及ぶ範囲は都道府県等の事務によるため、申請前に担当課へ確認してください。
区分2・区分3の申請で、賃金改善計画書は毎年出す必要がありますか
前年度に区分2または区分3の適用を受けている施設・事業所は、別紙様式5「賃金改善の誓約書」を提出し、その内容を職員に周知していれば、別紙様式4とその別添1・別添2の提出を要しません。区分1の別紙様式2「キャリアパス要件届出書」と資質向上のための計画も、過年度に提出して内容に変更がなければ不要になります。
出典
- 施設型給付費等に係る処遇改善等加算について(令和7年4月11日こ成保296・7文科初第250号、最終改正 令和8年4月8日こ成保319・8文科初第171号)/こども家庭庁(確認日: 2026年11月06日) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/189b7324/20260409_policies_kokoseido_194.pdf
- 施設型給付費等に係る処遇改善等加算について(令和7年4月11日こ成保296・7文科初第250号、令和7年4月公表版)/こども家庭庁(確認日: 2026年11月06日) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/34801398/20250414_policies_kokoseido_107.pdf
- 処遇改善等加算に関するFAQ(よくある質問)第7版(令和8年5月15日時点版)/こども家庭庁(確認日: 2026年11月06日) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/07a15850/02.260515_policies_kokoseido_199.pdf
- 令和7年度以降の処遇改善等加算について/こども家庭庁(確認日: 2026年11月06日) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/e9e424a2/20251006_policies_kokoseido_146.pdf
- 令和8年度公定価格・基準等の見直し事項(令和8年4月、成育局保育政策課)/こども家庭庁(確認日: 2026年11月06日) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/330bfaef/20260409_policies_kokoseido_178.pdf
- 公定価格に関するFAQ(よくある質問)第30版(令和8年4月8日時点版)/こども家庭庁(確認日: 2026年11月06日) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/90a1d13e/20260409_policies_kokoseido_191.pdf
- 保育政策関係資料集/こども家庭庁(確認日: 2026年11月06日) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/f924be75/20260416_policies_hoiku_228.pdf
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執筆: 小泉太郎(ZuMy株式会社 代表取締役CEO)。ZuMyは入園書類オンライン化サービス「zuuumy」を提供しています。児童票、緊急連絡先、生活状況票、健康問診票、食品調査票の5種を保護者がスマホから入力でき、保育ICT「CoDMON」へのCSV連携にも対応しています。4月に重なる入園事務の進め方はCoDMONとのCSV連携の記事でも紹介しています。導入の検討に使える資料をご請求ください。

