保育所児童保育要録とは、保育所に通う子どもの最終年度(小学校就学の始期に達する直前の年度)における保育の過程と育ちを要約し、就学先の小学校長に送る資料です。作成するのは最終年度の子どもだけで、施設長の責任の下、担当の保育士が記載します。小学校に送るのは抄本または写しです。原本は子どもが小学校を卒業するまでの間、園で保存します。
根拠は保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)第2章4(2)ウと、厚生労働省子ども家庭局保育課長通知「保育所保育指針の適用に際しての留意事項について」(平成30年3月30日付け子保発0330第2号)です。様式は国が一律に定めていません。市区町村が国の参考例をもとに作成し、管内の保育所に配布します。園が最初に確認するのは自分の市区町村が出している様式と取扱いの文書です。
保育要録は誰が、いつ、誰に向けて作りますか
最終年度の子どもについて、施設長の責任の下で担当の保育士が記載します。平成30年3月30日の通知は、作成・送付・保存を次のように書いています。
① 保育所児童保育要録は、最終年度の子どもについて作成すること。作成に当たっては、施設長の責任の下、担当の保育士が記載すること。② 子どもの就学に際して、作成した保育所児童保育要録の抄本又は写しを就学先の小学校の校長に送付すること。③ 保育所においては、作成した保育所児童保育要録の原本等について、その子どもが小学校を卒業するまでの間保存することが望ましいこと。
送付先は小学校の校長です。教育委員会や担任教員に直接渡す形は、通知に書かれていません。国の通知は、要録が小学校に送られることを市区町村教育委員会にあらかじめ周知するよう、市区町村側にも求めています。
通知は、要録が小学校に送付されることを入所時や懇談会等を通して保護者に周知しておくことが望ましいとしています。送付前に保護者へ内容を開示する手続きは、国の通知に書かれていません。横浜市は取扱い文書で「保育要録を事前に保護者等に開示を行う必要はありません」と明記し、送付後に開示請求があった場合は法令等に基づいて対応すると書いています。
小学校へ送るときの保護者同意は不要です。平成30年の通知は、私立保育所も個人情報取扱事業者に当たるものの、保育所保育指針第2章4(2)ウに基づいて要録を送付する場合は、当時の個人情報の保護に関する法律第23条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当するため、第三者提供について本人(保護者)の同意は不要であると説明しています。
保育要録に記載する事項は何ですか
記載する事項は決まっています。様式は決まっていません。平成30年の通知の別添1「保育所児童保育要録に記載する事項」が項目を示し、別紙資料1が様式の参考例を示す、という作りです。
別添1の「入所に関する記録」は6項目です。
- 児童の氏名、性別、生年月日及び現住所
- 保護者の氏名及び現住所
- 児童の保育期間(入所及び卒所年月日)
- 児童の就学先(小学校名)
- 保育所名及び所在地
- 施設長及び担当保育士氏名
「保育に関する記録」は2本立てです。1つが「保育の過程と子どもの育ちに関する事項」で、その中に「最終年度の重点」「個人の重点」「保育の展開と子どもの育ち」「特に配慮すべき事項」が入ります。もう1つが「最終年度に至るまでの育ちに関する事項」です。
「最終年度の重点」は年度当初に全体的な計画に基づく長期の見通しとして設定したものを書きます。「個人の重点」は1年間を振り返って、その子どもの指導で特に重視してきた点を書きます。この2つは書く時点が違います。年度当初に設定したクラスの重点を記録に残していない園は、年度末に思い出して書くことになります。
別紙資料1の参考例は、「保育の展開と子どもの育ち」の記入欄の左側に、保育所保育指針第2章の5領域(健康、人間関係、環境、言葉、表現)のねらいを「発達を捉える視点」として印刷した作りになっています。領域ごとに欄を埋める形式ではありません。発達の実情から向上が著しいと思われるものを捉えるための手がかりとして置かれています。
保育要録に書いてはいけないことは何ですか
国の通知と別添1が、書き方の制約を3つ示しています。
1つ目は、他の子どもとの比較や一定の基準に対する達成度についての評定で捉えないことです。別添1は「他の子どもとの比較や一定の基準に対する達成度についての評定によって捉えるものではないことに留意すること」と書いています。できた・できないの判定を並べる書き方は、この記載に反します。
2つ目は、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を到達目標として扱わないことです。別添1は、これらが到達すべき目標ではないことに留意し、項目別に子どもの育ちつつある姿を書き分けず、全体的かつ総合的に捉えて記入することと書いています。姿の項目ごとに1行ずつ所見を割り振る書き方は、通知の指示と逆向きになります。
3つ目は、特別な配慮を要する子どもについての書き方です。通知は、診断名及び障害の特性のみを書くことを避け、その子どもが育ってきた過程、生活上の課題、人との関わりにおける困難等に応じて行われてきた保育における工夫及び配慮を考慮した上で記載するよう求めています。小学校が引き継いで使えるのは、診断名よりも「何をしたらうまくいったか」です。
配偶者からの暴力の被害者と同居する子どもについては、要録の記述から就学先の小学校名や所在地等が配偶者(加害者)に伝わる懸念があると通知が指摘しています。この場合は「配偶者からの暴力の被害者の子どもの就学について(通知)」(平成21年7月13日付け21生参学第7号)を参考に、関係機関等と連携して情報を扱うこととされています。該当する子どもがいる園は、様式に書く前に市区町村の担当課へ相談してください。
横浜市は取扱い文書で、好ましくない書き方の例として「○○はできない」「○○のことで注意されることが多い」を挙げ、好ましい書き方として支援の仕方やかかわり方を具体的に書く例を示しています。要録の文章は、保育経過記録や児童票の記載項目と保存期間に残した日々の記録から起こします。
保育要録の保存期間は何年ですか
保育所の場合、国の通知は「その子どもが小学校を卒業するまでの間保存することが望ましい」と書いています。年数を法令で定めた規定はありません。小学校の在学期間が6年なので、実務上は6年とする自治体があります。
横浜市は「当該児童が小学校を卒業するまでの間(6年間)保存します。それ以降は廃棄処分します」と期間と廃棄まで書いています。佐世保市は保育所の保存年限を6年間とし、市の児童記録票と同等にしたと理由を記しています。保管方法も指定があり、横浜市は金庫・書庫など施錠できる場所に保管するとしています。
幼稚園と幼保連携型認定こども園は、年数の根拠が法令にあります。幼稚園の幼児指導要録は学校教育法施行規則第28条第1項第4号の表簿に当たり、同条第2項で5年間の保存、ただし入学、卒業等の学籍に関する記録は20年間と定められています。幼保連携型認定こども園は、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律施行規則第30条第4項で、入園、卒園等の学籍に関する記録の保存期間を20年間としています。
幼保連携型以外の認定こども園が作る認定こども園こども要録は、平成30年3月30日の連名通知(府子本第315号・29初幼教第17号・子保発0330第3号)で、小学校等を卒業するまでの間保存することが望ましく、ただし学籍等に関する記録については20年間保存することが望ましいとされています。
佐世保市は市内の様式を統一する際、幼稚園・認定こども園について「学籍の記録」と「指導の記録」を1枚にまとめたため保存年限を20年間とし、国の参考例が学籍20年・指導5年である点を併記しています。様式を1枚に統合すると、長い方の年数に合わせる扱いになります。保存期間は、園の保育日誌の法令上の位置づけと保存期間と並べて一覧にしておくと、書類ごとの廃棄判断が早くなります。
保育要録の様式と送付期日は自治体でどう違いますか
国の通知が「各市区町村においては、地域の実情等を踏まえ、別紙資料を参考として様式を作成し、管内の保育所に配布すること」としているため、様式と締切は自治体ごとに決まります。公開されている3市の文書を比べると、違いが出るのは対象児の確定日、送付期日、様式の構成です。
横浜市。対象児童を「翌年度小学校に入学する児童で、3月1日に保育所に在籍見込みの児童」と定め、施設長が写しを遅くとも3月10日ごろまでに各小学校長に届くように送付するとしています。送付方法は送付書を添えた直接交付や簡易書留郵便など確実な方法と指定し、受領書を受け取ることまで求めています。提出日から3月31日までに健康状態や家庭の状況に重要な変化があった場合は、原本に追記・修正日を記入したものの写しを小学校長へ送り直します。就学先が変わった場合は、すでに送付済みの要録を原則として施設長が回収します。
佐世保市。対象児を市内すべての乳幼児教育・保育施設に通い次年度に小学校へ就学する予定の幼児とし、送付期日を各年度3月末としています。送付物として要録の写しのほかに、送付書と受領書、受領書送付のための返信用封筒を挙げています。
京都市。令和2年1月に「京都市子どもはぐくみ要録」という市版標準様式を策定しました。小学校の教職員の活用・管理を考慮し、国では3種類ある要録の記載項目とサイズ(A4)を統一しています。構成も国の様式とは順序を変え、小学校への引き継ぎに特に必要な「年長児の指導等に関する記録」を先に、必要に応じて作成・送付する年中児以前の記録を後に配置しました。これにより小学校への送付が両面1枚でも可能になると説明しています。各園が一律で導入する義務はなく、園の状況に合わせて導入・活用できる標準的な様式とされています。すでに国の定める様式等で作成している場合、二重に作成する必要はないとしています。
締切は3月10日ごろの市も、3月末の市もあります。自分の園の期日と送付方法は、市区町村が配布している取扱い文書で確認してください。
保育要録をパソコンで作って電子で保存してよいですか
できます。平成30年3月30日の通知が「保育所児童保育要録について、情報通信技術を活用して書面の作成、送付及び保存を行うことは、現行の制度上も可能であること」と明記しています。幼保連携型認定こども園の園児指導要録についても、同日の連名通知が同じ趣旨を書いています。
運用の細部は自治体の指定に従います。佐世保市は3つのパターンを分けて書いています。紙に記入して紙で保存する場合は黒の耐水性ボールペンを使い、消えるものは使用不可で、施設長・担任が署名し押印します。電子で作成して紙で保存する場合は、入力した電子データをプリントアウトして署名・押印し、押印した原本を保存して、原本の完成後に電子データを削除します。電子作成・電子保存の場合は電子データを厳重に扱い、保管場所で管理します。小学校へ送るものは、電子作成・電子保存なら電子データをプリントアウトして原本証明をしたものとし、施設長押印および担任押印は不要としています。
要録は、日々の保育経過記録と児童票の書き方を欄ごとに確認した内容の積み上がりから、最終年度の1年を要約して作ります。記録が園内で検索できる形になっていると、担任が年度末に机に向かう時間が短くなります。機能要件を定めた補助の枠組みもあります(保育ICT推進加算の要件となる4機能)。
ZuMyが提供する入園書類オンライン化サービス zuuumy は、紙で集めていた入園時の書類を保護者がスマホから入力する形にしたものです。オンライン化している帳票は児童票、緊急連絡先、生活状況票、健康問診票、食品調査票の5種で、入力するのは保護者です。要録の「保育に関する記録」のように園が記録する部分は、zuuumy の機能に含まれません。入園時に保護者が入力する氏名・生年月日・現住所・保護者氏名は、要録の「入所に関する記録」で求められる項目と重なるため、入園時の情報を手書きで転記する作業を減らせます。保育ICTとの連携についてはCoDMONとのCSV連携に対応しています。
送付漏れは指導検査の指摘事例になっています
東京都福祉局が認可保育所向けに公表している「指導検査における主な指摘事例と改善策等について」は、「保育の状況」のうち「小学校との連携」の項目に、指摘事例として「保育所児童保育要録が小学校へ送付されていない」を挙げています。改善策は「保育所児童保育要録を小学校へ送付する」で、留意点として、資料には個人情報を含むため紛失防止の観点から小学校に届いたことが確認できる方法で送付することが望ましいと書かれています。
送付の時期は年度末の退職・異動と重なります。担当者が引き継ぐ前に送付が完了しているかを施設長が確認する形にしておくと、漏れを防げます。送付した記録を残す方法は、横浜市のように受領書を受け取る運用が参考になります。
保育所型認定こども園は選択肢が1つ増えます。平成30年の通知は、市区町村と相談しつつ認定こども園こども要録を作成することも可能であり、それを作成した場合は同一の子どもについて保育所児童保育要録を作成する必要はないとしています。どちらで作るかは市区町村と相談して決め、園内では1人の子どもについて2種類を作らない形にしてください。
よくある質問
保育要録は何歳児クラスの分を作りますか
最終年度(小学校就学の始期に達する直前の年度)の子どもについて作成します。平成30年3月30日付け子保発0330第2号の通知に、最終年度の子どもについて作成することと書かれています。0歳児から4歳児クラスの分を毎年作る決まりは、国の通知にありません。
保育要録は原本を小学校に送りますか
抄本または写しを送ります。国の通知は、作成した保育所児童保育要録の抄本又は写しを就学先の小学校の校長に送付すること、原本等は子どもが小学校を卒業するまでの間保存することが望ましいこととしています。
保育要録を小学校に送るとき保護者の同意は必要ですか
不要です。平成30年3月30日の通知は、保育所保育指針第2章4(2)ウに基づいて要録を送付する場合、当時の個人情報の保護に関する法律第23条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当するため、第三者提供について本人(保護者)の同意は不要であると説明しています。送付することを入所時や懇談会等で保護者に周知しておくことは、望ましい扱いとされています。
保育要録は手書きでなければいけませんか
手書きの義務はありません。国の通知は、情報通信技術を活用して書面の作成、送付及び保存を行うことは現行の制度上も可能であるとしています。紙で保存するか電子で保存するか、押印が必要かといった細部は自治体が指定している場合があるので、市区町村の取扱い文書を確認してください。
出典
- 保育所保育指針の適用に際しての留意事項について(平成30年3月30日付け子保発0330第2号)/こども家庭庁(確認日: 2026年11月02日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/a5eafc02/20231016_policies_hoiku_68.pdf
- 別添1 保育所児童保育要録に記載する事項/こども家庭庁(確認日: 2026年11月02日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/6d38e9a2/20231016_policies_hoiku_69.pdf
- 別紙資料1 保育所児童保育要録(様式の参考例)/こども家庭庁(確認日: 2026年11月02日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/1b80bb69/20231016_policies_hoiku_70.pdf
- 保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)/厚生労働省(確認日: 2026年11月02日)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450&dataType=0&pageNo=1
- 幼保連携型認定こども園園児指導要録の改善及び認定こども園こども要録の作成等に関する留意事項等について(通知)(平成30年3月30日付け府子本第315号・29初幼教第17号・子保発0330第3号)/こども家庭庁(確認日: 2026年11月02日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/761c413a-cfae-493c-918a-f147c1a73d97/2ea5789e/20230929_policies_kokoseido_kodomoen_kokuji_03.pdf
- 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第24条・第28条/e-Gov法令検索(確認日: 2026年11月02日)https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000080011
- 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律施行規則第30条/e-Gov法令検索(確認日: 2026年11月02日)https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000182002
- 横浜市保育所児童保育要録の取扱い・記入について(令和4年12月20日改訂)/横浜市こども青少年局保育・教育支援課(確認日: 2026年11月02日)https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/hoiku-yoji/shisetsu/shisetsutaisaku/shitukoujou/youroku/20190329150247481.files/0023_20240206.pdf
- 佐世保市 幼稚園幼児指導要録・保育所児童保育要録・幼保連携型認定こども園園児指導要録・認定こども園こども要録 ~作成と送付について~(第2版)/佐世保市(確認日: 2026年11月02日)https://www.city.sasebo.lg.jp/documents/24827/sakuseitosouhunituitedai2han.pdf
- 要録について(京都市子どもはぐくみ要録)/京都市(確認日: 2026年11月02日)https://www.city.kyoto.lg.jp/hagukumi/cmsfiles/contents/0000264/264195/01_about_youroku_.pdf
- 指導検査における主な指摘事例と改善策等について/東京都福祉局(確認日: 2026年11月02日)https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/R6-02
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執筆: 小泉太郎(ZuMy株式会社 代表取締役CEO)

