保育士の研修で園に義務があるのは、研修の機会を確保することと、体系的な研修計画を作ることです。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第7条の2第2項が研修機会の確保を、保育所保育指針第5章4(1)が研修計画の作成を、それぞれ「しなければならない」と定めています。処遇改善等加算(区分3)の研修修了要件は令和8年度から引き上がり、保育所の副主任保育士は専門分野別研修3分野以上とマネジメント研修、専門リーダーは専門分野別研修4分野以上の修了が必要になりました。
保育士の研修は園の義務ですか
研修の機会を確保することは園の義務です。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第7条の2は、第1項で職員に自己研鑽の努力義務を課し、第2項で施設側に次の義務を課しています。
児童福祉施設は、職員に対し、その資質の向上のための研修の機会を確保しなければならない。
保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)第5章4(1)は、研修計画について「保育所においては、当該保育所における保育の課題や各職員のキャリアパス等も見据えて、初任者から管理職員までの職位や職務内容等を踏まえた体系的な研修計画を作成しなければならない」と書いています。外部研修については同章3(2)が「必要に応じて、こうした外部研修への参加機会が確保されるよう努めなければならない」と、努力義務の語尾にしています。
研修の実施そのものが義務になっている分野もあります。設備及び運営に関する基準第6条の3第2項は、安全計画について職員に周知するとともに、研修及び訓練を定期的に実施しなければならないと定めています。第9条の3第2項の業務継続計画に関する研修と訓練は「定期的に実施するよう努めなければならない」で、こちらは努力義務です。同じ省令の中で義務と努力義務が書き分けられているので、年度の研修計画を作るときは条文の語尾まで確認してください。
保育士等キャリアアップ研修とは何ですか
保育士等キャリアアップ研修とは、保育現場のリーダー的職員を育てるための研修で、都道府県または都道府県知事が指定した研修実施機関が実施するものです。平成29年4月1日付け「保育士等キャリアアップ研修の実施について」(雇児保発0401第1号)の別紙「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」が、研修内容と実施方法の水準を定めています。
研修は3種類に分かれ、専門分野別研修はさらに6分野に分かれます。
- 専門分野別研修 — 乳児保育、幼児教育、障害児保育、食育・アレルギー対応、保健衛生・安全対策、保護者支援・子育て支援の6分野。それぞれの分野でリーダー的な役割を担う職員、担うことが見込まれる職員が対象です
- マネジメント研修 — 専門分野のリーダー的な役割の経験があり、主任保育士の下でミドルリーダーの役割を担う職員が対象です
- 保育実践研修 — 保育現場での実習経験が少ない保育士試験合格者等、長期間保育現場を離れていた潜在保育士等が対象です
研修時間はガイドライン3(3)で「1分野15時間以上」と決まっています。修了の評価は、15時間以上の研修を全て受講していることの確認と、受講後のレポート提出などで知識及び技能の習得を確認する形です。ガイドライン4は、レポートについて「レポート自体に理解度の評価(判定)を行って、修了の可否を決定することまでは想定していない」と書いています。合否を点数で決める試験型の研修ではありません。受講者の態度が不適切な場合や研修内容の理解を著しく欠いている場合に、修了の評価を行わないことができる、という規定だけが置かれています。
修了証の番号は12桁で、「都道府県番号(2桁)-修了証の発行年(西暦下2桁)-研修指定番号(3桁)-番号(5桁)」という構成です。研修指定番号のうち研修実施機関の番号は、都道府県が自ら実施する研修では「01」になります。修了証はガイドライン5(3)により、研修が実施された会場の所在地の都道府県以外でも効力を持ちます。職員が県をまたいで転職しても取り直す必要はありません。
処遇改善等加算の研修修了要件は令和8年度に何が変わりましたか
令和8年度から、保育所と地域型保育事業所の副主任保育士は専門分野別研修3分野以上とマネジメント研修、専門リーダーは専門分野別研修4分野以上の修了が必要になりました。令和7年度は、副主任保育士も専門リーダーも3以上の研修分野で足りていました。こども家庭庁と文部科学省の「施設型給付費等に係る処遇改善等加算(区分3)に係る研修修了要件について」(令和7年9月16日)のⅡが、この適用時期を定めています。
施設類型と発令ごとの要件は次のとおりです。
- 保育所・地域型保育事業所の副主任保育士 — 専門分野別研修のうち3以上の研修分野とマネジメント研修
- 保育所・地域型保育事業所の専門リーダー — 専門分野別研修のうち4以上の研修分野
- 保育所・地域型保育事業所の職務分野別リーダー — 担当する職務分野に対応する分野を含む1以上の研修分野
- 幼稚園・認定こども園の中核リーダー、専門リーダー — 合計60時間以上。中核リーダーは15時間以上のマネジメント分野に係る研修を含みます
- 幼稚園・認定こども園の若手リーダー — 合計15時間以上(幼稚園は担当する職務分野に対応する研修を含む)
幼稚園・認定こども園の60時間は、こども家庭庁の資料が「令和5年度は15時間以上とし、令和6年度以降、毎年度15時間以上ずつ引き上げる」と説明してきた数字の到達点です。令和7年度は45時間以上で、令和8年度に60時間以上になりました。加算の区分と賃金改善の計算方法は処遇改善加算の一本化と区分1〜3の要件にまとめています。
修了の確認方法は施設類型で違います。保育所・地域型保育事業所では、加算認定自治体が、申請する施設からガイドライン5(1)の修了証の写しを提出させることなどで確認します。幼稚園・認定こども園では、個別の研修の受講歴を職員個人が管理することを基本としたうえで、園が加算対象職員の発令の種類に応じた研修受講歴の一覧を作って提出します。
幼稚園・認定こども園には、キャリアアップ研修の時間をそのまま算入できる規定があります。通知は、キャリアアップ研修(保育実践研修を除く。幼稚園では乳児保育分野など保育所等に特化した研修も除く)について「各分野15時間を修了する必要はなく、受講した時間数を加算に係る研修の修了時間として算入することが可能であること」としています。マネジメント研修の算入は中核リーダーに限って有効です。
保育士の研修は無料で受けられますか
都道府県が委託して実施する研修は、受講料を無料にしている県があります。都道府県の指定を受けた民間団体が実施する研修は、団体が設定した受講料がかかります。ガイドライン2が実施主体を「都道府県又は都道府県知事の指定した研修実施機関」の2本立てにしているため、同じ都道府県の中に無料の研修と有料の研修が並びます。
自治体の案内には、この区別がはっきり書かれています。
- 愛知県は令和8年度の県研修を株式会社東京リーガルマインドに委託してオンライン方式で実施し、受講料を「無料(研修テキストは研修サイトからダウンロード)」としています。県の指定を受けた団体の研修には「指定申請分の受講には各団体が設定した受講料金が必要です」と注記しています
- 沖縄県は、県が委託で実施する「県実施研修」と、市町村・指定保育士養成施設・非営利団体が県の指定を受けて実施する「指定研修」の2種類があると説明しています
- 青森県は令和8年度の研修を3団体に委託していて、分野ごとに委託先が違います。幼児教育・障害児保育・食育アレルギー対応とマネジメント研修は一般社団法人青森県保育連合会、乳児保育と保育実践研修は社会福祉法人日本保育協会青森県支部、保健衛生・安全対策と保護者支援・子育て支援はNPO法人全国認定こども園協会青森県支部です
申込時期も都道府県ごとに違います。愛知県の令和8年度の申込期間は6月8日から7月10日まで、追加募集が7月17日まで、受講期間は8月7日から12月11日までで、2026年10月25日時点で今年度の受講申込は終了しています。開催する分野も毎年同じではありません。愛知県は令和8年度について、「保育実践分野」を除く7分野の開催としています。受講料と申込時期は、勤務先の都道府県のページで確認してください。
対象施設の範囲を国の定義より広げている自治体もあります。東京都は研修対象者を「保育所等(子ども・子育て支援法に基づく特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに東京都認証保育所をいう。)の保育現場で、それぞれの専門分野に関してリーダー的な役割を担う方」と説明していて、ガイドラインの定義に東京都認証保育所を加えています。認証保育所の職員が受講できるかどうかは、都道府県の案内文の定義まで読まないと分かりません。
園内研修をキャリアアップ研修の時間に算入できますか
保育所と地域型保育事業所の園内研修は、都道府県の確認を受けると1分野あたり最大4時間ぶんの研修時間が短縮されます。ガイドライン7(6)が、園内研修を企画・実施する施設・事業者からの申請に基づいて、都道府県が内容と研修時間を確認する手続きを定めています。確認の要件は3つです。
- 研修の講師が、ガイドラインに定める研修の講師(指定保育士養成施設の教員、または研修内容に関して十分な知識及び経験を有すると都道府県知事が認める者)であること
- 研修の目的及び内容が明確に設定され、ガイドラインに定める研修分野が設定され、その内容がガイドラインに沿っていること
- 研修受講者が明確に特定され、園内研修を実施する園において研修修了の証明が可能であること
幼稚園と認定こども園の枠は保育所より大きく、中核リーダー・専門リーダーの合計60時間のうち15時間以内を園内研修で満たせます。若手リーダーの合計15時間のうち園内研修に充てられるのは4時間以内です。
短縮されるのは15時間のうち最大4時間なので、保育所では園内研修だけで1分野を修了できません。残りの11時間以上は、都道府県または指定研修実施機関の研修を受けます。ガイドラインと令和7年9月16日の通知は、この申請の時期や様式を定めていません。園内研修を算入するかどうかを検討している園は、申請の受付時期と提出書類を都道府県に確認してください。
園内研修そのものは、保育所保育指針第5章3(1)が「日常的に職員同士が主体的に学び合う姿勢と環境が重要であり、職場内での研修の充実が図られなければならない」と位置づけています。外部研修を受けた職員の扱いについては、保育所保育指針解説が、研修で得た知識及び技能を他の職員と共有することで園全体の保育実践の質及び専門性の向上につなげることを求めています。受講した職員に園内研修で報告してもらう運用は、この趣旨に沿います。
研修計画と受講歴は園でどう管理しますか
保育所保育指針第5章4(1)の体系的な研修計画は、初任者から管理職員までの職位と職務内容を踏まえて作ります。研修の割り当てについて、同章4(3)は施設長の配慮事項を次のように書いています。
施設長等は保育所全体としての保育実践の質及び専門性の向上のために、研修の受講は特定の職員に偏ることなく行われるよう、配慮する必要がある。
受講歴の管理は、処遇改善等加算の確認方法に合わせて作ると二重管理になりません。保育所は修了証の写しを出せる状態にしておきます。氏名の変更や修了証の紛失があったときの再交付は、ガイドライン5(5)で都道府県と研修実施機関が行うことになっています。沖縄県は、県が実施した研修の修了証の再発行・訂正を県教育庁義務教育課が郵送でのみ受け付け、期間は1か月程度かかると案内しています。指定研修実施機関が実施した研修の修了証については、県では再発行を行わず、受講した実施機関への問い合わせになります。どちらの区分の研修だったかが分からないと再交付の窓口にたどり着けないので、修了証は実施機関名まで記録してください。
過去の研修の扱いにも規定があります。平成30年度以前に受講した研修は、加算認定自治体が通知に定める研修と内容が同等であると認め、受講が適切に確認できる場合に限り、要件を満たすものとして扱えます。幼稚園教諭免許状に係る旧免許状更新講習と免許法認定講習については、都道府県が専門分野別研修の各研修分野として適当と認めたものを複数組み合わせ、1つの分野の修了時間が計15時間以上に達した場合に、その研修分野の専門分野別研修を修了したとみなすことができます。旧免許状更新講習とは、教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律(令和4年法律第40号)の一部施行である令和4年7月1日より前に実施された免許状更新講習です。
研修に職員を出すには、勤務体制を動かす余裕が必要です。保育所保育指針第5章2(2)は、施設長について「職員の勤務体制の工夫等により、職員が計画的に研修等に参加し、その専門性の向上が図られるよう努めなければならない」と書いています。
ZuMy株式会社が提供している入園書類オンライン化サービス「zuuumy」は、紙で集めていた入園時の書類を、保護者がスマートフォンから入力する形にしています。オンライン化している帳票は児童票、緊急連絡先、生活状況票、健康問診票、食品調査票の5種類です。入力された内容は保育ICTのCoDMONへのCSV連携に対応しています。研修受講歴や修了証の管理は zuuumy の機能に含まれていません。入園時期に集中する書類の配付・回収・転記の作業を減らす用途のサービスです。入園書類のうち児童票の記載項目と保存期間は児童票の記載項目と保存期間の基準で整理しています。
よくある質問
保育士等キャリアアップ研修は1分野何時間ですか
1分野15時間以上です。保育士等キャリアアップ研修ガイドライン3(3)が定めています。園内研修について都道府県の確認を受けた場合、1分野最大4時間の研修時間が短縮されます。
キャリアアップ研修を受けないと処遇改善等加算はもらえませんか
処遇改善等加算(区分3)の対象職員には研修修了要件があります。令和8年度は、保育所の副主任保育士が専門分野別研修3分野以上とマネジメント研修、専門リーダーが専門分野別研修4分野以上、職務分野別リーダーが担当職務分野を含む1以上の研修分野です。加算の認定は加算認定自治体が行うので、要件の確認方法や提出書類は認定を行う自治体に確認してください。
他の都道府県で受けた修了証は使えますか
使えます。ガイドライン5(3)は、修了証について「修了した研修が実施された会場の所在地の都道府県以外の都道府県においても効力を有する」と定めています。令和7年9月16日の通知も、保育所等の加算の確認に関してこの取扱いを明記しています。
保育士の研修は無料のものだけで要件を満たせますか
都道府県が委託して実施する研修の受講料を無料にしている県では、その研修だけで分野を積み上げられます。愛知県は令和8年度の県研修を受講料無料とし、県の指定を受けた団体の研修には各団体が設定した受講料が必要だと案内しています。無料の研修は開催分野と募集期間が限られるので、勤務先の都道府県の案内で今年度の開催分野と申込期間を確認してください。
園内研修だけでキャリアアップ研修を修了できますか
保育所と地域型保育事業所では修了できません。園内研修で短縮されるのは1分野最大4時間で、15時間のうち残りは都道府県または指定研修実施機関の研修を受けます。幼稚園と認定こども園では、中核リーダー・専門リーダーの合計60時間のうち15時間以内、若手リーダーの合計15時間のうち4時間以内を園内研修で満たせます。
出典
- 保育士等キャリアアップ研修の実施について(平成29年4月1日雇児保発0401第1号、令和元年6月24日一部改正)/こども家庭庁(確認日: 2026年10月25日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/86b09b6b/20231016_policies_hoiku_61.pdf
- 施設型給付費等に係る処遇改善等加算(区分3)に係る研修修了要件について(令和7年9月16日)/こども家庭庁・文部科学省(確認日: 2026年10月25日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/eabac943/20260218_policies_hoiku_190.pdf
- 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)/e-Gov法令検索(確認日: 2026年10月25日)https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100063
- 保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)/厚生労働省(確認日: 2026年10月25日)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450&dataType=0&pageNo=1
- 保育所保育指針解説(平成30年2月)/こども家庭庁(確認日: 2026年10月25日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/eb316dce-fa78-48b4-90cc-da85228387c2/e442d00a/20231013-policies-hoiku-shishin-h30-0000202212.pdf
- 令和7年度以降の処遇改善等加算について/こども家庭庁(確認日: 2026年10月25日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/e9e424a2/20251006_policies_kokoseido_146.pdf
- 保育士等キャリアアップ研修について(令和8年度)/愛知県(確認日: 2026年10月25日)https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kosodate/0000006852.html
- 保育士等キャリアアップ研修/沖縄県(確認日: 2026年10月25日)https://www.pref.okinawa.jp/kyoiku/edu/1008490/1008491/1008758.html
- 青森県保育士等キャリアアップ研修について/青森県(確認日: 2026年10月25日)https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kodomo/kodomo/hoiku-careerup.html
- 東京都保育士等キャリアアップ研修に関すること/東京都福祉局(確認日: 2026年10月25日)https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/hoiku/careerup-kensyu
著者: 小泉太郎(ZuMy株式会社 代表取締役CEO)

